小山宙哉ラジオ「ノンノ・バビア」第66回「小山宙哉の映画がエエガナ『怒り』2」

コヤチュー部プレミアム会員に向けて絶賛配信中の「小山宙哉のノンノ・バビア」。キャラクターの創造秘話や小山さんの好きなマンガや映画を掘り下げていく企画。ときには、おたよりを元に本気の妄想をしてみたり。毎回バクバクなおしゃべりを、ほぼ全文テキストにしてお届けします。

宇宙兄弟スタッフのコムロです。

コヤチューです。

アシスタントのあさころです。

今日のコーナーは「小山宙哉の映画がエエガナ」ですが、小山さんから『怒り』のことでもうちょっとあるとお聞きして、急遽コーナーに入れました。

前回『怒り』の話をしたときに、すごくハイレベルの映画だと大絶賛しつつ、2カ所だけツッコミどころがありますよ、みたいなことを話しましたよね。
そのツッコミどころに対して、じゃあどうすればいいんかみたいなことは大して言ってないんで。それを考えてきたんです。

すごい。

僕が漫画を描くときにどういうことを考えながら作っているのかということに繋がるんで、そういう楽しみ方をしてもらえればいいかなと思っております。
まず「辰哉くんどこ行くねん」シーンですね。
(『怒り』沖縄編にて、登場人物の女子高生・泉が同級生の辰哉と夜会っていた際、束の間辰哉の姿を消すシーン)

あさころさんは思いませんでしたか?

たしかに、あんな短時間で消えていったので。

消えていったよね。泉ちゃんのような可愛い人を置いてね。好きな子を一人でおいてどっか行く?
しかも夜だし。まず「え?」ってなるじゃないですか。
達也くんが、酔っ払ったらおかしくなる性格とか体質やったとかだったら理解できたかもしれないけど、
どこに行ったのかっていう説明もないですからね。それでちょっと疑問が残っちゃうんですよ。

で、なんでこうなってしまったかっていうと、おそらくですね。この映画で一番大事な部分って、泉ちゃんが米軍の軍人に強姦されるシーン。
ここは外せないじゃないですか。

そうですね。

だから作り手は逆算していったと思うんですね。
軍人さんに襲われる。そのために(泉が)一人で歩いてるところを軍人に見せたい。
で、どうやって一人にするか。辰哉くんにどっか行ってもらう。
それをそのままやっちゃったんですよ。
これ僕がマンガを描く時によく言ってる、「ストーリーや演出のためにキャラクターを動かしちゃいけない」っていう。
これをやっちゃった形だと思うんですね。
文字通り、泉ちゃんを一人にするために、達也くんを動かしてしまった。
そうじゃなくて、キャラクターらしい行動を取ったものが、ストーリーになってないといけないと。
分かりますか?

分かります。

じゃあどうすればよかったのか。
泉ちゃんが振り向いたら、辰哉くんは、いるんですよ。
でも(酔って)フラフラなんですよ。
泉ちゃんが介抱しながら、「もう帰ろう」と言うんですけど、辰哉くんが「トイレ行きたい」と。
でも周り見たらシャッター閉まってるし、じゃあ外の公園に行こうって、二人で一緒に行く。
怖いところを通りながらも、二人でいることで、泉ちゃん的にはちょっと安心感もある。
だけど米軍の人から見たら、頼りないフラフラの彼氏が女の子に連れて行かれてるっていう絵が見えてるわけじゃないですか。
それって一人でいるのと何ら変わらない、襲うきっかけにはなり得るんですよ。
二人でそのまま公園に行って、辰哉くんが「トイレ行ってくる」って離れた瞬間、初めて泉ちゃんが一人になる。で、同じように襲われると。
こうすると、一人になった瞬間、映像的にいきなり不安感がその場で煽られると思うんですよ。
さっきまでちょっとした安心感で済んでたのが、一人になった瞬間に急に不安になる。

人間ドラマとしても、グッと上がりますね。

気持ち悪いとか吐きたいとか言って、トイレ行くって流れは自然だし、辰哉くんの頼りなさ感のおかげで、米軍の兵士に襲われたっていうのがさらに強調される。
キャラクターの動きによって、ちゃんとストーリーができていく。
そうしたほうが、ここの違和感はなくなるんじゃないかと。



